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税理士試験

税理士試験と事務所のスタンス

2024.12.05

〇税理士試験の合格発表と職員の成果

毎年、税理士試験の合格発表に合わせて記事をアップしています。(過去の税理士試験記事)今年の合格発表は11月29日でした。今年から5科目合格者だけでなく、科目合格者も国税庁HPで発表されることとなりました。これまで発表日に発送される通知書を「いまか!いまか!」と待っていたことと比べますと、HPで確認できるのはありがたいですね。弊所職員の受験生も無事に消費税法の科目合格を確認できました(おめでとう!)。彼はこれで4科目の合格ですので、試験突破まであと1科目です。

〇税理士事務所の職員構成とは?

さて今回は、そんな税理士試験と税理士事務所の運営(経営?)についてです。実は税理士事務所に勤めている職員は、そのほとんどが税理士ではありません。会計や税務について学んではいることと思いますが、「資格」は持っていません。個人の税理士事務所なら税理士は多くても3名程度です。1人の税理士が10名以上の無資格の職員を雇っている場合も少なくありません。そんな中、事務所職員は税理士を目ざすメンバーと、目ざさないメンバーに分かれます。

〇税理士試験を目ざす職員のモチベーション

税理士を目ざすメンバーの生活はハードです。そもそも一般的な税理士事務所では、繁忙期の残業や休日出勤は当たり前。一部の幹部クラス以外は給与水準も低めです。改善されつつあるとはいえ、まだまだ黒っぽいグレーな業界なのです。その業務の合間を縫って試験勉強を何年も継続するわけです。1科目1000時間といわれる試験勉強を5科目分行います。体力的にも心理的にも半端なくハードです。

なぜそこまでして合格を目ざすのでしょうか?夢があるからです。「税理士になって先生と呼ばれたい!」「自分の事務所を持ちたい!」掛けた時間と労力に見合う報酬があると思うからこそ、ハードな毎日を過ごすことができます。端的に言えば「独立して自由になりたい!稼ぎたい!」訳です。

〇所長税理士の受験に対するスタンス

さて、そんな職員の雇い主である所長税理士も二つのパターンに分かれます。受験否定派と肯定派です。受験生を前にして所長の心理は非常にアンビバレントな状態です。受験勉強は職員の実力を確実に上昇させますので、本来は喜ばしいことです。税法に明るい職員の存在は、事務所のレベルアップに直結します。半面、彼が学びを深めるほど合格が近づき、独立(=退職)の危険性が高まります。さらに営業力が高く顧問先に受けの良い職員であれば、独立と同時に顧問先が一緒に離れてしまう事もあり得ます。顧問先を取った取られたの話しは「業界あるある」なのです。

〇受験否定派の事務所

そのような危険性を認識しているからこそ、受験否定派の所長がうまれます。面と向かっては応援するフリをします。しかし業務量や事務所の雰囲気、休みの取得可否、様々な面で暗黙の圧力を受けます。合格後の雇用条件にも特に大きな変化はありません。そうすると受験生側も苦々しい思いを持ちながら、勉強を続けることになります。受験生にとっては「受かるまでの辛抱」ということです。もちろん彼が見事に合格した場合は、できる限り速やかに独立、もしくはより条件の良い事務所へ転職となります。自分の担当先の会社を退職金代わりに持ち去るということも珍しくありません。

半面、後述の受験肯定派の事務所と比べて、人件費や受験応援にかかる経費が圧縮されます。職員が合格しないほど(勉強しないほど)、事務所の経営は楽になっていきます。

〇受験肯定派の事務所

受験肯定派の所長は職員の受験を積極的に応援します。それは職員の力量の総和が事務所の力量となる事を知っているからです。さらに受験生にとって独立(退職)するよりも魅力的な職場を提供している自信があるからでしょう。受験予備校の授業料補助、試験休み、柔軟な勤務形態など、受験の応援体制が具体的に準備されている事務所も珍しくありません。そうすると事務所の雰囲気も、受験勉強だけでなく、業務に対しても「学ぶ姿勢」が当たり前になります。どれほど知識のある所長がいるとしても、税理士事務所の力量は職員の力量に規定されます。

半面、人件費や経費負担は重くなります。なによりも合格した元受験生が、独立(つまり退職)しないという保証はありません。一定の大きなリスクを負う事になります。

〇安定か挑戦か:事務所経営の選択

経営的に見ると、受験否定派の事務所の方が安定感があるように思われます。受験肯定派の事務所は大きなリスクを抱えながら事務所経営をすることとなります。ただ純粋にどちらの税理士事務所に魅力があるかというと、考えるまでもありません。そして経営者として、どちらの事務所経営に面白みがあるかというと、圧倒的に後者でしょう。

やはり職員が懸命に学習し、税理士試験にも安心して挑戦できる事務所でありたいと思います。弊所では、受験予備校の学費半額負担、試験前一週間休暇、柔軟な振替勤務体制を整えています。まだ税理士試験の合格者は産まれていません。将来、タクスリー税理士事務所に多くの「税理士」が働いていることになると良いですね。

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