
2026.01.16

「税務調査って、ある日いきなり来るんでしょ?」 そう思っている社長さんは多いのですが、実は「来やすい季節」があります。しかもその季節は、会社の決算月によって左右される傾向にあるのです。
結論から言うと、「2〜5月決算」の会社は、税務調査のハイシーズンに選ばれやすく、かつ調査が厳しくなりやすい傾向があります。 この記事では、その裏側にある税務署の事情についてお話しします。
国税庁の事務年度は「7月〜翌年6月」で区切られており、人事異動もこの時期に行われます。 この1年の中で、税務調査は大きく2つの期間に分かれます。
・「7~12月」の調査「秋シーズン」・・・主な対象:2〜5月決算の法人
・「4〜6月」の調査「春シーズン」・・・主な対象:6〜1月決算の法人
なお、1〜3月も調査自体は行われますが、確定申告シーズンで税務署も税理士も手一杯になるため、実質的な調査期間は「4〜6月の3か月弱」というのが実情です。 税務署としても、申告書が提出(決算から2か月後)され、その内容を分析・準備する時間を考慮すると、決算直後よりも数か月後に調査を行う方が効率的だからです。
2〜5月決算の会社が「秋シーズン」の調査対象になりやすい理由は、統計的な「確率」にあります。
① 調査件数が「春シーズン」の約2倍以上
調査官には半期ごとに「こなすべき調査件数」の目安があります。人事異動直後の「7〜12月(上期)」は、年度の後半(下期)である「4〜6月」に比べ、全国的に2倍以上の件数の調査が行われます。つまり、この時期に対象となる会社は、単純計算で当たる確率が2倍以上になるイメージです。
② 対象となる法人数が少ない
国税庁のデータ(決算期月別の法人数)を見ると、さらに驚きの事実がわかります。
・「秋シーズン」調査の対象(2〜5月決算): 約113万社
・「春シーズン」調査の対象(6〜1月決算): 約150万社
イメージとして、「分母(会社数)が少ないのに、分子(調査件数)が多い」のが「秋シーズン」の調査です。結果として、2〜5月決算の会社は、他の月決算の会社よりも格段に選ばれる確率が高まってしまうのです。
確率だけでなく「調査の中身」にも差が出やすい事情があります。
・評価のタイミング:
調査官の評価や昇進の判断材料は、主に上期(7〜12月)の結果に置かれることが多いと言われています。
・時間の余裕:
「7〜12月」は半年かけてじっくり調査できますが、「4〜6月」は確定申告や次期異動の都合で、実質3か月弱で終わらせなければなりません。
そのため現場では、以下のような傾向が見受けられます。
・「秋シーズン」 短期間で終わらせる『件数重視』の調査(申告是認も多い)
・「春シーズン」 時間をかけて粘り強く確認する『金額重視』の調査(重加算税などのペナルティが出やすい)
また、この基本サイクルから外れたタイミングで調査が来る場合は、税務署側ですでに「不正の疑いが強い」と判断しているケースが多く、より厳しい調査になることが予想されます。

税務調査のためだけに決算月を決める必要はありませんが、リスクコントロールの一つとして「決算月の変更」を検討する価値はあります。 もし2〜5月決算であれば、6〜1月決算のゾーンへ移すことで、当たりやすく・厳しくなりやすい「秋シーズン」の調査を回避できる可能性が高まります。
注意点:
・臨時株主総会や各種届出が必要
・変更する年だけ、変則的に決算が2回(または短い周期)になる
・それに伴い、決算報酬や納税のタイミングが前倒しになる
一方で、納税時期を売上の波に合わせるなど、資金繰りの最適化にもつながるため、一度点検してみるのも面白いでしょう。
・税務調査の時期は、決算月によって決まる側面がある
・2〜5月決算は「秋のハイシーズン」に当たりやすく、内容も重くなりがち
・決算月の変更は、リスクと資金繰りをコントロールする有効な手段
もちろん、一番の防御は「日頃からの正確な申告」です。そのうえで、 「自社の決算月だと、どんなリスクがあるのか?」「変更の実務負担はどのくらいか?」 など気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。
具体的な数字をもとに、御社にとって最適なタイミングを一緒に考えていきましょう。整理していくことで、税務調査に対する不安はかなり軽くなります。